自分がやった最大の失敗のひとつが、貯蓄型保険に入ったことです。

社会人4年目のころ、先輩の紹介で担当者を紹介され、勧められるまま加入しました。当時は良いものだと思っていました。今なら入りません。

ただ、当時の自分に足りなかったのは「保険は損」という知識ではなく、利回りを自分で計算する方法でした。この記事はその計算の話です。

「返戻率111%」は年利何%なのか

貯蓄型保険の設計書には、たいてい返戻率が書いてあります。

「払込総額720万円に対して、受取額800万円。返戻率111%です」

こう言われると、増えているように聞こえます。実際、金額としては80万円増えています。

ただ、ここには時間が入っていません。

具体例で計算します。

条件
毎月の保険料 30,000円
払込期間 20年
受取時期 30年後
払込総額 720万円
受取額 800万円(返戻率111%)

この条件の実質利回りは、年0.53%です。

30年かけて11%増える、というのは、年利に直すとこの程度になります。定期預金よりは高いですが、増えていると呼べるかは微妙なラインです。

同じ金額を投資信託に回すとどうなるか

比較のために、同じ毎月3万円を20年間積み立てて、30年目まで置いた場合を計算します。

想定利回り 30年後 保険との差
年0% 720万円 保険が80万円多い
年3% 約1,318万円 投信が約518万円多い
年5% 約1,983万円 投信が約1,183万円多い
年7% 約2,995万円 投信が約2,195万円多い

全世界株や米国株のインデックスファンドの過去の実績はおおむね年4〜7%です。もちろん将来を保証するものではありませんし、途中で大きく下がる年もあります。

それでも、年0.53%と年5%の差は30年で1,100万円を超えます。 これが「保険で貯めるか、投資で増やすか」の実際の距離です。

条件を自分の保険に合わせて試せるツールを作りました。保険証券を手元に置いて入れてみてください。

貯蓄型保険の利回り計算機|投資信託と並べるとどうなるか

それでも、保険側に有利な要素は3つある

ここで終わると片手落ちなので、保険の側に立つ要素も書きます。この3つを無視した比較はフェアではありません。

1. 保障がついている

貯蓄型保険には死亡保障などがついています。上の利回り計算に、この価値は入っていません。

本来フェアに比べるなら、同じ保障を掛け捨て保険で買った場合の保険料を引いてから利回りを出すべきです。

たとえば同等の保障が月2,000円の掛け捨てで買えるなら、3万円のうち2.8万円が貯蓄部分ということになります。実際にやってみると、それでも投信側が有利になることが多いのですが、差は縮みます。

2. 生命保険料控除がある

貯蓄型保険の保険料は、生命保険料控除の対象になります。

2012年以降の契約(新制度)では、一般生命保険料控除・介護医療保険料控除・個人年金保険料控除の3区分があり、それぞれ年間8万円超の払込で所得税は上限4万円の所得控除が受けられます。住民税は上限2.8万円です。

所得税率20%の人なら、所得税・住民税を合わせて年間1万円強の負担軽減になります。上の利回りには含めていないので、その分は保険側にプラスされます。

ただし上限があるので、保険料を増やしても控除は増えません。 月3万円払っていても、控除の対象になるのは年8万円までの部分です。控除目的なら、はるかに少ない保険料で上限に届きます。

※控除額は年度の税制改正で変わることがあります。最新の内容は国税庁の公式情報をご確認ください。

3. 受取時の税金が軽いことがある

満期保険金を一時金で受け取ると、多くの場合は一時所得になります。

一時所得は「受取額 − 払込保険料 − 特別控除50万円」のさらに2分の1が課税対象です。上の例では増加分が80万円なので、50万円を引いた30万円の半分、15万円だけが課税対象になります。

一方、投資信託の利益には約20.315%がかかります(NISA枠内なら非課税)。

つまり税引後で比べると差は少し縮みます。ただし、投信側もNISAを使えば非課税です。年間360万円・生涯1,800万円の枠がある今、月3万円程度ならNISAの枠内に十分収まります。

判断すべきは「今までいくら払ったか」ではない

すでに入っている人向けに、いちばん大事なことを書きます。

貯蓄型保険を早期に解約すると、解約返戻金は払込総額を下回ります。 これを見て「ここまで払ったのにもったいない」と感じて続けてしまう人が多い。自分も一瞬そう思いました。

でも、すでに払ったお金は解約してもしなくても戻りません。判断すべきは、

これから払う保険料を、これから何に回すのが良いか

だけです。過去に払った分は、どちらを選んでも変わらないので、比較の材料になりません。

自分は結局、解約しました。解約返戻金は元本を割っていましたが、その後の10年で回収できています。

家族や友人からいちばん多い相談も保険です。とくに「よく分からない保険にたくさん入っていて、解約が面倒だからそのままにしている」というケース。面倒だからという理由だけで非効率が続いているのは、もったいないと思っています。

まとめ

貯蓄型保険は「悪いもの」ではなく、利回りを自分で計算していないまま入るのが問題だと思っています。

保障は掛け捨てで買い、貯蓄は貯蓄で持つ。この2つを分けて考えると判断しやすくなります。

まずは保険証券を出してきて、毎月の保険料・払込期間・受取額の3つを確認してください。それだけあれば、年利が計算できます。

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生命保険の必要保障額計算機|公的保障を引くといくら必要か

※本記事の数値は2026年7月時点の税制に基づく概算です。実際の返戻率・返戻金・税額は契約内容と個別事情によって異なります。判断の前に保険証券および設計書をご確認ください。


本記事は個人の見解であり、特定の金融商品の勧誘・推奨ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。